怒涛のセミレポ[3](ウェブブランディング:キノトロープ生田代表)

では、リトル間が空きましたが、続いて、10月21日(金)アップグレードふくいでのセミナー、キノトロープ生田代表のセミナーレポートをお送りしたいと思います。



第3回アップグレードふくい、セミナープロフィールキノトロープ

[講師略歴]
 生田 昌弘(いくた・まさひろ)氏 (株)キノトロープ代表取締役
 1959年生まれ岡山県出身。1985年に生田写真事務所を設立し、カメラマンとして活動を開始する。1993年12月にキノトロープを設立。プロデューサとして一貫した方針で数々のWEBソリューションを築き上げ、現在もネットエバンジェリストとして活動を実践中。株式会社キノトロープ代表取締役、株式会社イノベーションラボ代表取締役、オーセンティア取締役、株式会社クリエイティブホープ取締役。

ウェブはメディアである。

 生田さん自身が、初めてネットに触れたのはまさに立ち上がり時期である95年頃だそうで、はじめてみたときの第一印象が「これは新しいメディアだ!」と感じられたそうです。そして、こういう新しいメディアが立ち上がる瞬間に立ち会えたからには、何か行動を起こしたい!という思いから、95年にウェブ制作会社を立ち上げたとのこと。その時生田さんは35歳。ほんと年齢は関係ないですね。やりたいと思った時がやりどきなんだろうなあ。
 特にコンピュータに関する知識のある方がいたようなお話しではなかったので、立ち上がりには相当ご苦労されたんだと思います。実際にサーバーを立ち上げるのも自分達で調べながらやったとおっしゃってました。でも、そうしたスキルや手法の苦労というのは、(当然大変だろうけど)熱意とその後の切羽詰った状況での学習で押し切れるんだという事例を今まで何回も見てきていますし、生田さんもそうでした。いや、すごいパワーです。

 ウェブというメディアに一目ぼれして、クライアント・ユーザーのためを思い一生懸命仕事をしてきた結果、現状がある。まさに日本におけるウェブ制作業界の先頭を走ってきた方なんだなと思いました。

 そうして立ち上げたキノトロープは今や業界を代表する老舗制作会社に成長。生田さんの口から、ライブドア堀江社長は以前バイトで仕事されていた。とか、百式管理人さんが時々遊びに来られるとか聞くと、「ああ、生田さんって日本のウェブ業界の重鎮なんだな(笑)」と。
 でも、ホント創業13年の会社が老舗っていうことは、ウェブ業界がどれほど成熟していないかを示してますよね。そして、今後可能性ががまだまだあることもあわせて示していると思います。

 また、キノトロープでは、自社のノウハウを本にして公開されているんです。「ウェブブランディング成功の法則55」という本です。また、交流会ではドドーンと30冊も参加者の方にプレゼントしてくれました。ホント、太っ腹です。
 ノウハウをオープンにすること自体すごいことだと思うんですけど、交流会などで社員さんなどにお話しを聞いた際、「ウェブ業界のあらゆる企業にとって、参考にしていただければと思って書いてますが、そのままこのワークフローをこなせるところはうちしかないと思っているし、本を書いた時点と今のキノトロープの立ち位置はすでに違う。」と言い切ってらっしゃいました。

 生田さんは、紙媒体といった他のメディアに対しても大きな価値を見出してらっしゃるそうで、前記のノウハウ本はもちろん、非定期で発刊してきたウェブ年鑑についても発行したいとおっしゃってました。これ、一回出すごとにめちゃめちゃ赤字が出るそうなんです。それでも内部を説得して出しちゃうよ、と茶目っ気たっぷりにおっしゃってました(笑)

 まさに、業界のトップを走る企業のトップの姿ですね。もはや、日本の枠を超えて世界にも誇れるんじゃないかと。

すべてはユーザーのために。

極論すると、生田さんはこの一点のみ伝えたかったのかなと思っています。

もはや、これってウェブ業界に限った話じゃないですよね。業種問わずの基本というか原則というか。でも、常々これを意識しながら、理想を追い求めて検討・修正を行っていく会社・組織がどれだけあるのか。。。って、ああ、自分で書いていて頭がいたい・・・

ユーザー視点とそのための実践について、それこそ会社を立ち上げた頃である10年前からメッセージを送り続けてきたとのこと。「ユーザーにとって有効であるかどうかが何よりも優先」させてサイト設計・制作を行うべきであると説いてらっしゃいました。

ウェブサイトのサービスについても、とことん使ってテストしてみる。キノトロープの場合には、初心者に開設前のテストサイトを試用してもらう、「ユーザビリティチェック」を欠かさないそうです。こうした積み重ねから、ウェブ上のボタンの動作一つ一つについても、それを変更することでどういった効果があるのかを検証し、サイトに反映する。

ああ、実に合理的でわかりやすいプロセス。かつ、ゴールのない作業ですよね。でも、これをやるとやらないでは、未来に着実な差がつくことは間違いないです。

技術者ではない私がいうのもなんなんですが、「この機能は便利なはず!」と思って付加したものが、普段使う方にとって必ず便利なものになるかというと、そうじゃないんですね。以前のネットユーザーは、マニアックな方が多かのでしょうけど、今ネットを利用する方の多くは家電感覚というか、さほどコンピュータに関する知識などを持たなくても利用される層が増えていますよね。
「以前からネットやパソコンに触れているからこそ見えない部分がある!」ということを認識しなさいということ。プロだからこそ見えない盲点という感じでしょうか。

ウェブは究極の小売店

ウェブ制作で必要なのは、技術ではなく顧客満足度顧客満足度を上げるために技術が必要であれば物にするということであると。ああ、まったくその通り(笑)あくまで技術は目的を達成するための手段なんですよね。

日本の小売店等は既に非常に高い日本独自のOne to Oneマーケティングを成立させていると生田さんはおっしゃっていました。chikuraさんのブログでも紹介されていますが、日本の魚屋のお話しを例にあげておられました。

 日本の魚屋さんは、顧客に対して名前で呼びかけ、お宅のお子さん、鯖嫌いだったでしょ。この鯖なら絶対大丈夫だよ。とアドバイスする。鯖が嫌いだという情報を持った上で、違う魚を紹介するのではなく、自信を持った商品である鯖を薦める。こんなサービスを、自動化できるなんて思うほうがおかしい。逆に自動化できるサービスは大企業に負ける。もっと地道な方法を実践しなさい。

 これに加えて、アマゾンのレコメンドなんて、全然駄目って一刀両断されてました(笑)



あとは、申込みフォームに関する考え方についても一言。

(企業側にとって必須と考えている)情報が入力されてないからといって、エラーとか表示するのは実に失礼な話である。リアルの店舗でそんなこといわれたら、まずそのお店では買わない。ちゃんと丁寧に、お手数ですがご記入をお願いいたします。と促すのが最低の礼儀であろう。ひどいサイトになると、一度記入したものを全て消して位置から入力しないといけない場合もある。大体お客が一箇所記入ミスしただけで、全て消しゴムで消してもう一度入力させるお店なんてこの世の中にあるわけがない。

ああ、もうおっしゃる通りです(笑)でも、この当たり前のことが大事なんですよね。

生田さん、社員さんから何回も同じ話をするってことを言われたりするらしいんですけど(笑)、「実践できていないから何度もいうんだ。わかっただけ(わかったつもり)じゃ意味がない。実践できるまで何度でも言うんです。」っておっしゃってました。これは、少し話はそれますが、第4回アップグレードふくいの講師であるウィンビットの弘中さんも、大好評のメルマガ「発想源」のなかで、つねづね語っているところです。(11/18の第4回UGFもおすすめですよー。)

知っていても、実践していなければ知らないのと同じ。自己満足の域を出ないんですよね。日々の業務に反映させてこそなんだと思います。

訪問者は必ず目的を持っている。

お客さんは問題を解決するためにサイトを訪れる。この問題を解決し、お客さんに対して満足を提供するためにウェブサイトは存在するべきである。お客さんにとっては、たどり着いたページがトップページであるのだから、トップページからお客さんを流すとかではなく、たどり着くどのページについてもキチンとお客さんの要望に答えられるものになるように作りこむべきである。

これも、ほんとそうですよね。いくら正面玄関を綺麗にしても、他にたくさんの入口があったらわざわざ遠回りすることなく入っちゃいますよね。私も、地元の某ショッピングセンターに何度も行ったことありますけど、いまだに正面から入ったことないですもん(笑)だからといって、ウラから入った時に荷物が積んであったり、フロア図とかが無かったりしたら非常に不便に感じますもんね。

あとは、クライアントからウェブ制作の依頼を受ける際には、制作に入る前段階でとことんクライアントが抱える問題を洗い出して解決方法を探るそうです。極端な話、その問題を解決する方法がウェブサイトではなかった場合には、ウェブ制作自体を受けないと。お客のためを思って仕事を請けない!これぞ究極の顧客サービスですよ!すごいよなあ。まず、ほとんどの会社でこんなことは実践できないと思います。


その後交流会、そして懇親会に流れ込みました。

二次会となる交流会では、Webブランディング成功の法則55という本を抽選でプレゼント。普段よりも人が少ないなあと思いつつ抽選を続けていたんですけど、途中で本の数とお客さんとして来られていた会場の方の人数がピッタリだったことに気づき(笑)、最後は順番に手渡ししておりました。

ああ、このためにワザワザビンゴソフト(当センター職員H氏作成のオリジナルソフト!)インストールしておいたのに・・・(笑)


そして、交流会のあとは、折角の機会ということで駅前の居酒屋さんでキノトロープのみなさんと有志の参加者とともに三次会へ突入。色々と参考になるお話し、刺激になるお話しなどいただきました。
地元の幸である、かにやおさしみ、へしこなどを食していただいたのですが、どれもおいしいと食べていただき、セッティングした甲斐があったと一安心しておりました。


約半日、キノトロープのみなさんとご一緒して感じたのが、気配りと雰囲気の良さです。着いた時から社長と社員さんとは思えない気楽なおしゃべり。また、事務局である私に対しても気楽に話してくださって、最後ホテルにお送りさせていただくまで非常に楽しくご一緒させていただくことができました。こういう所にも、顧客満足度を身上とするキノトロープさんの一端を垣間見たような気がします。

キノトロープのみなさん、本当にありがとうございました!

近いうちに、へしことか福井の幸をぜひ、お送りしたいと思いますー(笑)